殺戮都市
移動を始めて20分。


俺達は東軍と南軍の境界にやって来た。


光のカーテンのような物が地面から天まで伸びていて、その向こう側には東軍と思われる人達がちらほら見える。


「さ、僕達も隠れて様子を見るよ。最初だから無理せずに。死ぬと思ったら逃げる事、良いね?」


路上に放置されている車の陰に隠れて、俺と明美さんに手招きする新崎さん。


片側三車線の大通り。


ここで戦うのか。


車が動いてたら、交通事故は必至だな。


そんな事を考えながら辺りを見回すと、なるほど、他にも物陰に隠れて東軍を待ち構えている様子の人達がいる。


「だ、大丈夫なんですか?俺達がここに隠れたの、向こうの人に見られてるんじゃ……」


「それは問題ないわ。防衛側から攻撃側の動きは見えても、攻撃側から防衛側は見えないの。だから、防衛側は少し有利と言えるわね」


俺の問いに、慣れた様子で答えた奈央さん。


何度も同じ質問をされたんだろうな。


それにしても……東軍に人が集まって来ている。


それも、10や20って数じゃない。


俺が見えているだけでも100人以上が光の壁の前で、その時を待っているのだ。
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