殺戮都市
他の東軍の人達は、南軍の人達と戦っているだけしかいない。


後は皆、キングを探して街へと入ったのだろう。


そして……出来るだけ強者のように、日本刀を抜くのを躊躇っていただけのように見せるんだと、俺は精一杯の演技をして見せた。


「こ、これだけは抜きたくなかったのに。お前が……」


「うるせえよ!!」


俺のハッタリなんて聞く耳を持たない。


そう言わんばかりに襲い掛かる男。


生死が掛かったこの場面で、脅せば逃げるかもしれないなんて、俺は何て間抜けだったんだろう。


「う、うわああああああっ!!」


恐怖にかられ、使った事のない日本刀をブンブンと振り回した。


男は動きを止められずに、その間合いに踏み込んでしまう。


そして……。
















振り下ろそうとしていた腕を、偶然にも刃先が捉え、その肉と骨を切り裂いたのだ。


ダラリと垂れる、僅かな肉と皮だけで繋がった腕。


俺と男がそれに気付いたのは、返り血を浴びて視界が赤くなった時だった。


「ゲフッ……コホッ!」


頭の中が真っ白になる……目の前の光景がまるでテレビの中の世界のようで。


俺が偶然斬ったのは腕だけではなく、男の首も捉えていたようで。


ゴポゴポと傷口から溢れる血が、やけに不気味に見えた。
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