恋の神様はどこにいる?
「小町ちゃん、ごめんね。ホント志貴は慌ただしくって」
「はぁ……」
志貴に負けず劣らず、千里さんも慌ただしいですよ。なんてことは、口に出して言えないけれど。
どうやら午前中は、千里さんにいろいろ教えてもらうみたい。
千里さんについて社務所内の部屋を移動すると、六畳ほどの和室に到着する。
「はい、ここが女子の更衣室兼休憩室。と言っても常勤の巫女は和歌ちゃんと小町ちゃんだけだから、結構広いでしょ。あ、時々もうひとり使うけどね」
それって……。
「五鈴さん、ですか?」
思わず、声に出して言ってしまった。
「あれ? 小町ちゃん、五鈴のこと知ってるの?」
不思議そうな顔をする千里さんに、視線を逸らしてから頷いた。
「ふ~ん、そっか。知ってるなら話が早い。五鈴は近所に住んでて、俺達とは幼なじみでね。家族ぐるみの付き合いなんだ」
やっぱり幼なじみだったんだ。しかも家族ぐるみの付き合いなら、あの仲の良さも頷ける。
だけどあのふたり、それだけじゃないような……。私の勘ぐり過ぎかもしれないけれど。
「あのふたりのこと、気になる?」
「え?」
突然グイッと顔を覗かれて、自分がまたひとりで考え事をしていたのに気づく。
「すみません。今から仕事だっていうのに、ボーッとしてしまって」
「まだ仕事中じゃないし大目に見るけど、仕事中は集中してね」
「はい」
千里さんは私の頭をポンッと叩くと、部屋の奥にあるロッカーを指さした。