恋の神様はどこにいる?

「舞いの稽古で地獄を見せてやるから、覚悟しとけよ」

「地獄って、もっと他の言い方できないの?」

「ホントよね。志貴って昔から口は悪くって」

舞いの準備ができたのか、後ろから五鈴さんの声がして振り返る。

そこにはさっき説明してもらった略装の束装に着替えた、美しい五鈴さんが立っていて思わず「綺麗」とこぼしてしまう。

「小町さん、ありがとう。あ、さっきの続きだけど。志貴の口の悪さは、相手が好きな子になると……」

「五鈴~!! もうそれ以上喋るなよ。それ以上喋ったら……」

「はいはい、わかったわよ。とにかく悪気はないから、そんなに怒らないであげてね」

「はあ……」

志貴の口の悪さは今に始まったことじゃないから、五鈴さんが言うほど怒っていたわけじゃないんだけど。五鈴さんにそう言われると、これ以上何も言えなくなってしまって。自分でもよくわからないけれど「ごめん」と志貴に謝る自分がいた。

「別に小町が謝ることないけど。とにかく五鈴は少し喋りすぎだ」

「は~い。怒られちゃった」

五鈴さんは私の顔を見ると、ペロッと小さく下を出して戯けてみせる。そんなお茶目な顔も可愛くて。ズンと気持ちが沈んでしまう。

そしてその気持ちは浮上してこないまま、舞いの稽古が始まってしまった。



< 190 / 254 >

この作品をシェア

pagetop