恋の神様はどこにいる?
「舞いの稽古で地獄を見せてやるから、覚悟しとけよ」
「地獄って、もっと他の言い方できないの?」
「ホントよね。志貴って昔から口は悪くって」
舞いの準備ができたのか、後ろから五鈴さんの声がして振り返る。
そこにはさっき説明してもらった略装の束装に着替えた、美しい五鈴さんが立っていて思わず「綺麗」とこぼしてしまう。
「小町さん、ありがとう。あ、さっきの続きだけど。志貴の口の悪さは、相手が好きな子になると……」
「五鈴~!! もうそれ以上喋るなよ。それ以上喋ったら……」
「はいはい、わかったわよ。とにかく悪気はないから、そんなに怒らないであげてね」
「はあ……」
志貴の口の悪さは今に始まったことじゃないから、五鈴さんが言うほど怒っていたわけじゃないんだけど。五鈴さんにそう言われると、これ以上何も言えなくなってしまって。自分でもよくわからないけれど「ごめん」と志貴に謝る自分がいた。
「別に小町が謝ることないけど。とにかく五鈴は少し喋りすぎだ」
「は~い。怒られちゃった」
五鈴さんは私の顔を見ると、ペロッと小さく下を出して戯けてみせる。そんなお茶目な顔も可愛くて。ズンと気持ちが沈んでしまう。
そしてその気持ちは浮上してこないまま、舞いの稽古が始まってしまった。