恋の神様はどこにいる?
顔はお人形みたいに可愛い顔をしているのに、やることはまるでチンピラ。こうなった香澄には、もう嘘や冗談は通用しない。
「わかったから、この手離して。苦しいし、服が伸びちゃう」
「全部話すのよ。いい、わかった?」
「はい……」
こんな性格をしているのに、香澄の彼氏はエリート弁護士先生。何度か会ったことがあるけれど、文句のつけようがないほど素敵な人で、香澄のことを心から愛してくれている。
でも香澄、彼の前で本性を表していない。これじゃあ詐欺と一緒じゃない!!
ちろっと香澄の顔を見ると、間髪をいれずに香澄の声が飛んできた。
「そんな目してないで、早く白状しちゃいなさい」
そんな香澄の勢いに押され、私は土曜日からのことを全部話す羽目になってしまった。
「へえ~、そんなことがあったんだ。で、小町はどうなのよ?」
「どうなのって?」
「その志貴とか言う人のこと、好きになっちゃったの?」
「ぶほぉっ!! ちょ、ちょっと香澄、冗談言わないでよ。誰があんな奴……」
飲みかけていたビールを派手に吹くと、おしぼりで口元を拭う。
どうしたら、そういう言葉が出てくるわけ? なんで私が、志貴のことを好きになっちゃうのよ!!
そんなこと絶対ないし。好きじゃないし。あんな奴、私には全く関係ないし……。
「その割には、“気になっちゃう”って顔してるのは何故?」
「ええっ!? 私、そんな顔してる?」
「うん、してるしてる。頭の中は元カレのことじゃなくて、華咲神社の神主さんのことでいっぱいですって顔してる」
「香澄、馬鹿にしてるでしょ?」
香澄は面白そうにケラケラ笑うと、目の前にあるホッケの開きを頬張った。