愛情の鎖

「皿は適当にそこにあるやつ出して使ってくれればいいから」


オッケー。そう笑顔で返せばコウさんがキッチンの方へ来て、ちょうど向いにあるカウンターの椅子に腰を下ろす。


なるほど…

そこには他にも二つほど椅子が並んでいて、きっといつも此処で彼が食事をしているんだということが納得できた。


それより食器の量が少なすぎる…

食器棚にあるのは1人分のお茶碗とお椀。そしてお皿類が2枚ほど。

いくら何でもこの少なさはちょっと…

そう思いながらも他人の家の事にあまり口だしちゃいけない。

ふいに思い留めコウさんにお粥と切ったばかりのリンゴを差し出すと、彼の感心した言葉が返ってきた。


「へー美味いじゃん」

「本当?」

「いつも飲んだくれてんのにちゃんと主婦してるんだな」

「それは一言余計でしょ」


コウさんが一瞬手を止めて笑ったから、私も釣られるように笑う。

でもちょっとだけ嬉しい。

まさかこんなシンプルなお粥で褒められるとは思わなかった。

なんだかふんわりと柔らかい空気が流れ、さっきまでの緊張が解けていく。


「作りすぎちゃったから沢山食べてね」


何だかこういう雰囲気も悪くない。

いつもよりコウさんが柔らかに見える。

静かに食べる姿を見つめながら、私はほのぼのとした気持ちになっていて、何となく口元が緩む。

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