愛情の鎖

「くっ……」


何故かコウさんが笑っていた。

可笑しそうに、頬を緩ます姿に思わず拍子抜けしてしまった。


「な、なによっ」

「いーや、やっぱお前はツンケン悪態ついてるほうがしっくりくるわ」

「えっ?」

「そうやって俺にはずっと言いたいことをズバズバ言ってろよ」


両手にカップを持って歩み寄ってきた彼が、何故か私に向かって口の端を上げた。


「梨央、お前ぐらいなもんだ。俺に向かってそんな風に堂々と暴言吐ける女は」

「へっ?」

「安心しろ。あの部屋に他の女を連れこんだことは一度もない。お前だけだ。むしろ他の女に興味はねぇよ」


目の前で見下ろされ、ドキリと頬が熱くなる。

どの口がそんなこと言ってるの?

少し照れつつ、疑心暗鬼の瞳でコウさんを見上げると、彼は持っていたカップをテーブルに置き、指先で私の頬をスッーと撫でる。


「あの部屋にはお前に会う為だけに帰ってた。それは嘘じゃねーよ」

「で、でも唯さんは?時々コウさんの部屋に来てたんでしょ?あの人だって普通に女の人だよ?」


恥ずかしくなって目をそらす。

やたら照れくさくなった私は素直に頷くことができず、思わずそんなことを蒸し返してしまう。
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