愛情の鎖

まぁ、いい。

時間なら沢山ある。

まだ始まったばかり。

お近づきになるのはこれからだ。

逃がさねぇよ。澤田梨央、ちゃん。

これからお前の本性を暴いてやるよ。澤田宗一郎と共に…

俺は吸いかけの煙草を飲み終えた空き缶に押し潰すと、静まり返った夜空に視線を移した。

やけにさっきの歌声が耳にこびりついて離れなかった。

まるで美声だな。思わず聞き入ってしまった自分に苦笑いを浮かべながらも、気を取り直すように再びポケットから煙草を取り出すと、俺は間をおかずにそれをまた口にくわえた。


怯える彼女の瞳、消え入りそうなか細い声。

それが、彼女の第一印象。


この出逢いが俺にとって生涯忘れることのできないものになるなんて、この時の俺はまだ想像すらしていなかった。

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