愛情の鎖
「しっかし、あの男も中々やりますよね?」
半年前うちの課に配属してきた後輩の西田が、写真を1枚ちらつかせて俺の顔を見た。
「20ですよ。20才差。こんな若い子を自分の手元に置いて、いったい毎日どんな生活を送ってるんでしょうね?」
「さあな」
「正直羨ましいっす!しかもこんな可愛い子、俺でさえここ何年か仕事仕事で彼女なんていないのに!あーマジ、羨ましい。誰でもいいから女抱きてぇ…」
「アホか」
俺は西田の戯言を一喝すると、呆れたように写真を奪い取った。
そこに映る一人の女性。
澤田梨央、か。旧姓中園梨央、21才。
確かに見た目はそれなりだと思うが、俺からしたらまだ幼すぎる。
写真に映るあどけない笑顔。それは汚れた世界なんてものとは程遠く、縁のない人生を歩んできたお嬢様タイプに見える。
「こういうタイプほど腹の中じゃなに考えてるのか分かんねーじゃねえの?」
俺はその時そう思っていた。
確かに、境遇は可愛そうだとは思うが……、
いくら親の借金の身代りのためって、どんな事情があるにしろ、18才であの男の元に転がり込むなんて、大した度胸の賜物だって。