愛情の鎖

宗一郎さんに抱かれた後私は洗面室へと向かった。

彼は行為が終わった後つものように満足そうに眠ってしまった。そんな彼を見届けながら私は深いため息を吐く。


「はぁ……」


疲れる。

これさえなければきっと私はまだ救われると思う。

けれどそう不満を吐いたところで誰も幸せにはなれない。

彼に私の初めてを奪われてから3年。

それからというもの幾度となく彼に抱かれてきたけれど、宗一郎さんとのセックスがこれといっていいものだとも思わない。

確かに気持ちいいとは感じる。だけど何かが違う。

できるならしたくないし、べたべた触られるのも極力拒否したいぐらいだ。


「夫婦って苦痛だな……」


いや、違うか。

きっと私が特別なだけ。

だって私が宗一郎さんを愛せないから。

どうやっても彼を好きだと思えないのが一番の理由だってわかってる。

それに…、彼と出会う前はちゃんと好きな人もいた。

正直その人とは上手くいっていたし、私がこんなことにならなかったらきっとその彼とは今頃付き合えてたかもしれない。


だから、かな。


「好き」という感情をちゃんと知っているからこそ、私の感情は前に進めない。宙ぶらりんな気持ちのまま自分の思いを持て余してるのかもしれない。



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