愛情の鎖
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「……あの、本当にいいんでしょうか?」
私は少し遠慮がちにコウさんを見た。
あれからあっという間に一週間が経ち、今私は少し正装をした格好で不安げに彼を見つめている。
今日は菜々の発表会の日。
ずっと行きたそうに迷っていた私に「行けばいいじゃないか」とあっさり言ってくれたコウさんなんだけど…
「やっぱり人が多い所はちょっと……」
「まだそんな事言ってるのか?」
「だって、その……」
「そんな化粧までしといて?」
半笑いに顔を近付けられて、ぽっと顔を赤らめた。
コウさんはそんな私をからかうように見つめると、スッと私の頬をやんわりと撫でた。
「なかなか似合ってんじゃん。前も思ったけど梨央って、化粧するとぐっと大人っぽくなるのな」
「え、あのっ……」
鼻と鼻がくっつきそうな距離で囁かれて、ドキリと目を泳がせる。
ち、近い、近いよ…
「女は化粧で化けるって本当だな」
「それってどういう意味ですか?」
「こういう意味だ」
親指で唇をなぞられて、ビクッと反応する。
直後「んっ……」唇を塞がれた私は、目を見開き不覚にも呆然としたまま固まった。
「コウっ……」
だけどそんな私の焦りを吹き飛ばすぐらい彼の口付けは次第に深くなり、ドクドクと抵抗力を奪ばれていく。