愛情の鎖

そのあと母とは別れ、菜々の発表会も無事に終わった。

菜々のピアノは素敵だった。

菜々にも公演前に控え室で久しぶりに会ったけど、相変わらず可愛くて思わず顔に笑みが浮かんだ。

頑張ったね、菜々。

心の中でそう呟き、私とコウさんはホール内を後にする。

発表会ではコウさんの言うとおり、特に変わった事はなかった。

やっぱり心配で時々キョロキョロと辺りを見渡してみたけれど、特に気になる人はいなかった。
むしろ「逆にお前の方が怪しいぞ」とコウさんに指摘され、それ以上ビクビクするのはやめた。

演奏中ホールではコウさんが何気に私の手をずっと握ってくれていたから、それがまた少し心強かったのかもしれない。

だから私は最後の方はもう大丈夫なんだと思い、安易に油断した。


「あの、帰る前に少しトイレに行ってきてもいいですか?」

「ああ」


そう言って私は会場内のトイレに駆け込んだ。

彼はその間トイレ近くに設置された喫煙所で煙草を吸ってくると言い、一旦私から離れた。

尿意を済ませ手を洗っていると、誰か隣に同じように手を洗いに来た気配を感じた。

ふと見ると、その人はモデル並みに背の高い女性で金髪のとても綺麗な人。

思わず見とれていると、その女性が私の視線に気づいたのか、こっちに向いた。

目が合うと私を見下ろし、何故かニコリと笑う。

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