妄想世界に屁理屈を。
その時だった。
シュッ、と黒い影が上から降ってきたのは。
目の前に突如現れた飛来物に、二三歩離れる。
「うぉ!?」
な、なんだ?
まさにシュッって擬音ぴったりのそれを目で確認する。
「あ…人?」
人。
真っ黒のスーツを来ていて、ネクタイも真っ黒のTHE葬式スタイル。
乳白色の宝石があしらわれたネクタイピンが、陽に照らされほんのりと赤く輝いている。
なびく黒髪。
切れ長の目。
ハッとするように美しい美男子だった。
「――貴殿が柚邑殿ですか」
発せられた低温に、腹底が重くなる。
なんか、緊張感。
「あ…の…」
「ミサキくんっ!」
パタパタと隣を歩いていたスズが走っていく
ミサキくん?
まさか…そんなかわいい名称が似合わない、こいつが。
こいつが、ミサキくんなの?