妄想世界に屁理屈を。


勢いよくジャンプして、くるくると自分より大きい彼に抱きつく。

抱きつくより、絡まりつくというような。

「きゃーっ!久しぶりだね!」

そんな無礼を働かれても、彼はびくともしなかった。


木偶の棒である。


「質問に答えて頂きたいのですが」


「あ、はい。柚邑です。もうそろそろでゆーちゃんです」


「…吾は宮下殿の紹介で参った、御先(ミサキ)と申します」


口調に似合わぬ爽やかな美声だ。


「…朱雀、離れて頂きたいのですが」


「やーだよー!ミサキくんだミサキくんだ!生ミサキくんだ!」


“うわあ!体があったら私も抱きつきてぇ!久しぶりだな御先!”


ああ、なんか名前納得。



主の先を行く、勝利を導く鳥の神――御先。



漢字を宛がわれて納得した。


とても綺麗な名前だ。



…しかし、アカネの声が繋がってないのか?


“あー、それな。私とこいつは繋がってねーの。スズと鸞と苑雛と黒庵、お父さん。それに、タマ。それしか繋がってないの。御先とだありんは繋がってるけどな”


旦那の家来とは繋がってないらしい。

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