妄想世界に屁理屈を。

“いや、繋がってはいるけど、血が違う…みたいな?”


ややこしくなった。


「ミサキくんはね、昔からのお友達なの!」

やけに幼く楽しそうにいう。

なんでこの子はこんなに幼稚なんだ。

俺の時とは明らかに違う態度に、面白くない。


「朱雀、お嬢様は何処に?」


「アカネさまなら柚邑の中に」

「…なるほど。お嬢様、心中お察しいたします」


「アカネお嬢様って呼ばれてるの!?ヤバイ受ける」

せめて奥さまかアカネさまだろ。

旦那のいる身でお嬢様は、痛い。


“なあっ!?いーだろ別に…だ、旦那の家来なんだし、イケメンにお嬢様って呼ばれたかったの!”


…どの種族の女も、考えは結局一緒なんだね。


「そうそう!ミサキくん!あのね、スズこの間――」


「朱雀、話はあとでたっぷり聞かせてもらう所存ゆえ、今は吾の主――黒庵さまについて、お嬢様にお話しさせてはくれないですか」

ぴくりと、中のアカネが止まる。

やはり、彼は知っているのだ。


“…覚悟は決めてっから、話せと伝えろ”


アカネの暗い声に、さっきまで幸せそうだったスズも緊張し始めた。


「アカネさまは、ご覚悟を決めてるそうだから。ミサキくん」


空気が、一気に替わった。
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