妄想世界に屁理屈を。
「え…柚邑!?」
「柚邑殿!」
体をアカネが乗っ取ってるのかもしれない、そう思うほど衝動的だった。
山中の方へ、浮き立つ白髪が消えていく。
ガードレールを飛び越えたそれを追いかけ、真っ暗闇を白髪の明かりを目指して追いかけた。
“追いかけろ!見失うなバカ!”
「何なのあれ!アカネ!」
“知るか!だけど、あれは…”
あれは、タマの白髪だ。
七色に光を弾く、ムーンストーンの白髪。
銀とは違う、乳白色の色。
遠ざかってくそれを追いかけていく。
息が上がって来たけど、向こうもそれは同じらしい。
二人とも小刻みに肩が上がってる。
…二人とも?
そして気づく。
え、ちょ、なんで二人!?
「あれ?タマって二人?」
“な訳ねぇだろ!!タマは一人だよ!って、あ”
ころん、と、影が一つ下に落ちる。
「ああ!大丈夫!?ば、ばか!」
ポニーテールの方の白髪が転んだ方を心配し、立ち止まった。
「…もう!怪我は?ない?」
「……だ、だいじょーぶ」
ハンカチらしいものを取り出して、転んだ方の白髪についた土を払っていく。
そのすきに余裕で追い付いた。