妄想世界に屁理屈を。



「笑い事ではない。時が偏るということは、すなわち不平等を意味する。時が不平等など、人間の信仰から大きく逸れている。そんなことをしては、信仰は得られなくなる」


あ、なるほど。
それはあまりよくないな。


「だからそれだけは避けようと、時の神を作り出した時に父上は考えていた。“愛したら死ぬ”と、プログラムされていた」


急に切ない話になって、胸がぎゅっとする。


「ていうか、父上を含め、みんな恋なんかするはずがないと思っていた。とても気難しい、変わった性格の持ち主だったからな。最初は誰とも会話をしようとしなかったんだ」

散々な言いようだな。






「しかし彼女は愛してしまったんだ。他ならぬ一一驪を」




「「えええええええ!?」」


一斉に叫んで驪さんを見た。

複雑そうな顔をして、かなり居心地が悪そうだ。


「お父さん……そんな女の子を落とすなんてやりますね!」

「きゃーっ!漫画じゃ!漫画の世界じゃ!」

「ちくしょう、お父さんに負けたわ俺…」

“なんでそんな面白いこと言ってくれなかったの!?”


男として尊敬する男性陣と、突如始まった恋バナに騒ぎ出す女性陣。

俺としてはこんなイケメンだったら落ちない女の人いないと思うんだけどなぁ。


「騒ぐな、落ち着け、品のない」
「だって楽しいんじゃもーん」


鸞さんがテンション上げたまんま答えた。
そして、はたときづく。



「……あれ、愛したら死ぬってプログラムされてるんじゃったか?」




「そうだ。そして彼女は一一死んだ」



< 602 / 631 >

この作品をシェア

pagetop