妄想世界に屁理屈を。


「なん…じゃ…」


鸞さんがむくりと起き上がると、続くように苑雛くんも起き上がった。


「これは…一体…スズ、どうしたの!?その頭!」


「おいアカネ!起きろ!しっかりしろ!」


黒庵さんが声で起こすと、実体のないアカネも目を覚ました。


「バラバラになってる…ていうかスズ何その頭…!」



気がつくと、スズの頭はいつもの茶髪になっていた。


髪の毛は短いままだが、元に戻っている。



「うわぁあああん柚邑ー!」



ガン泣きで俺のところに来たスズ。


「よかった…よかったよおおお」


抱きしめながら、頭をしっかり撫でた。



「よくやった!!!えらい!!!!本当にえらい!!!」


本当はアカネに抱きつきたいんだろうが、俺で我慢してくれてるのか、遠慮なく鼻水を付けてくる。


実際、上手くいくとは思ってなかったのだろう。


しかし全員白龍が作ったものだ、スズに同化して、鸞さんたちに同化しないわけがない。



「スズがみんなを助けてくれたんだ」


「ごめんのうスズ…わらわが不甲斐ないばかりに」


「いえ!そんな!私がやりたかったからやったまでです」




そうだ。

やりたかったからやったと言うことは…



「スズ、最高神の座はいいの…?」


俺に抱きついていたスズは上目遣いで見つめて。


「私、最高神なんかじゃなくて、鳳凰に仕える朱雀だから!」



にっこりと、なんの迷いもなさそうに。



「それ以上に名誉な仕事ってないと思うの!!」



晴れ晴れとした顔で、そう言い放った。







「ぐぬ…朱雀!せっかく白龍の力を渡したというのに!」





赤龍が悔しそうに言うがいなや、その眼前に刃が飛んだ。





「舐めたことしてくれてんなぁ、おい」





黒庵さんがドスの効いた声で赤龍を切ろうとしていた。


音もなく現れたのでさすがの赤龍も驚いたのか、よたよたと後ろに下がり。


「素戔嗚尊!!!おいスサノオ!私を助けろ!」


「ひぃっ、俺かんべーん。鳳凰の“武”と戦ったところで勝ち目ないもん!計画破綻したし、この契約はなかったことにするぞ!」

しっぽを巻いて逃げる素戔嗚尊を前に、話が違うぞと大声で叱咤する赤龍。

「じゃあ覚悟は出来てんな?」

「ま、まて、私は」






赤龍が言葉を紡げたのはそこまでだった。






黒庵さんより早く、刃を落とした者がいた。






「あなたは黙って、死んでなさいっ…!」




顔面ぼろぼろの状態で背後から、肩から腹にかけて水で切った、驪さんだった。
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