わきみち喫茶


「こちらがメニューになります」


差し出されたメニュー表に書かれているのは、喫茶店としては馴染み深い普通のメニュー。
一通り目を通して顔をあげようとしたとき…ふと、一番下に書かれた文字に目がとまった。

“マスターオリジナル(気まぐれブレンド)”


「気になります?」


ハッとして顔を上げると、ふんわりとした優しい微笑みが目の前にあった。


「その日の気分に合わせて、特別にブレンドしたものを提供してるんです。
あっ、もちろん味はわたしが保証します」


ピンっと指を立てて、楽しげに語る女性に自然と笑みが溢れる。
彼女は不思議な雰囲気を持つ人だった。


「じゃあ、それをお願いします」


おそらく名前から察するに、この店のマスターが厳選した豆を使ってつくったコーヒーなのだろう。
その日の気分に合わせてということから、気まぐれという言い回しを使っているのだと推測できる。
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