召しませヒメの甘い蜜
◆超絶不器用娘


ドン、ガラガラ……、グワングワングワン……


「きゃぁ〜っっ!!」


「姫野さん、今度はなんですか」


本日もはや三度目の彼女の悲鳴に、神野潮はさして驚きもせず彼女のキッチンテーブルへと足早に近づいた。

ここは、イタリアレストラン ボーノ・ボーノの主催する公開料理講座「誰にでもできる美味しいイタリアン」の教室。

銀座の人気イタリアンレストランの人気メニューが作れるとあって、セレブ主婦達で賑わっていた。

今日のメニューは、ミラノ風ポークカツレツとポテトサラダ。

冷製ソラマメのスープとデザートのティラミスが店からサービスで提供され、教室後に自分の作った料理と共にランチタイムとなる。

一講座参加費が五千円と高めだが、シェフが直々に教授してくれるとあって人気を呼んでいた。


レストランが料理講座を主催するには大きな目的が二つある。

一つ目は新規の顧客開拓。

二つ目は店の知名度の向上。

広く生徒を募集するとは言っても、実際は固定客からの紹介による口コミで生徒は集まってくる。

ボーノ・ボーノくらいの人気レストランともなれば、顧客は政治家や実業家、医者や弁護士、所謂セレブと分類される上層クラスの人々が多い。

目の前でアタフタと自分の失態を取り繕おうと慌てているこの娘、姫野麗にしても、実際それなりの家の箱入り娘に違いない。


どんなにはた迷惑な生徒であったとしても、対応はあくまで冷静に、かつスマートにしなくてはならない。
< 8 / 31 >

この作品をシェア

pagetop