ロスト・クロニクル~後編~

 クローディアには、フレイ・バゼラードという人物がいる。その人物は切れ者として有名で、何かを仕掛けてくるとしたら彼が先頭に立って行動を起こすに違いないが、フレイは動く気配を見せない。

 それどころか親衛隊隊長の地位を譲り、引退生活を送っていると聞く。ルークは、その点が納得いかなかった。何故、そのように冷静でいられるのか。しかし、本人に問い質すことはできない。

 なにもしてこないことが、逆に恐怖心が募る。母国の者達は跡継ぎのミシェルのことを心配しているが、ルークはフレイの行動を危惧する。それだけ、フレイ・バゼラードは要注意人物だった。

 だが、ルークがあれこれ考えたところで、物事がいい方向に進むことはない。彼がエルバード公国を動かしているわけではなく、そもそもルークの忠告を受け入れてくれるかわからない。

 ルークが母国の将来を考えていると、急に外が騒がしくなる。複数の人間が「止めてください」と言い、誰かの行動を制しているようだ。制されている人物は彼等の言葉が鬱陶しいのか、罵倒している。

 罵倒している者――声音で瞬時に、その人物がミシェルだということが判明する。自身の主人の登場にルークは驚くも、同時に一体何をやっているのかという気持ちも存在し、何処かげんなりとしていた。

 だからといってミシェルを制さないと、何を仕出かすかわかったものではない。それは身を持って知っているので、ルークは部屋から出るとミシェルの前に赴き何をしているのかと問う。

「お前に会いに来た」

 ミシェルの予想外の言葉に、ルークは絶句する。同時に、何か面倒なことを言われるのかと身構えてしまう。

「お前は僕に忠誠を誓っている?」

 突然、何を言い出すのか――

 そのような疑問を抱くが、ルークはミシェルに忠誠を誓っている。いや、誓わないといけない。だからミシェルの前に跪くと、ルークはミシェルに忠誠を誓っていると力強く宣言する。

「それを聞いて、安心したよ」

「ミシェル様?」

「僕が結婚した時、いい席に座らせるよ」

 勿論、ミシェルが言う結婚相手というのはクローディアの女王シェラ。相変わらずの執着っぷりに、先程までミシェルを制していた者達の顔が歪む。ここまで執着していると、別の結婚相手を世話するというわけにもいかない。それに世話しても、相手にしないだろう。
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