ロスト・クロニクル~後編~

「言わないで」

「本当じゃないか」

 常識を逸脱した性格の持ち主であってもラルフは悪友と呼ばれた人物で、卒業後彼が無事にやっているかどうか本気で心配していたのだが、ラルフの話を聞いた瞬間、一瞬でも彼の身を心配した自分が馬鹿らしくなってくる。それにラルフほど「学習力がない」という言葉が似合う人物はいない。

 そしてラルフがクローディアを訪れた理由は、エイルに貴族の息子という立場を最大限に利用して貰い新しい職の斡旋――と、何とも他人任せの考えを抱いてこの国を訪れたという。

 自分で努力しようとしないラルフに、エイルの顔が引き攣っていく。しかしエイルは悪魔の心を持つ人間ではないので、地上最強の食虫植物マルガリータの処分をすれば聞き入れてもいいと提案を持ち掛ける。

 彼の言葉にラルフは目を見開くと、マルガリータの処分を激しく拒絶する。これも生みの親の愛情か、それともただの執着心がそうされているのか――どちらにせよ、生態系を破壊しかねないマルガリータを連れて行くわけにはいかない。

 エイルはマルガリータが植わっている鉢植えをラルフ奪い取ると、二度と復活を果さないように焼却処分し深く埋めるという。

「止めて!」

「却下」

「可愛いマルガリータを――」

「再就職はいいのか?」

「そ、それは……」

「はい。焼却決定」

 流石にマルガリータを愛していると叫んでも、再就職の魔力にラルフは勝つことはできない。メルダースを破壊し莫大な借金を背負ったというのに、更に就職先の研究所を壊し此方でも借金を背負ってしまった。その両方の借金の金額を合わせると、一生掛けて返せるか怪しい。

 一生掛けて支払えるかどうかわからない金額だが、だからといって踏み倒していいものではない。特にメルダースの学園長クリスティ相手に踏み倒しを行った場合、人生が終了してしまう。

 クリスティの迫力を学園生活の中で嫌というほど理解しているので、全身から粘着性の高い汗が流れ落ちてくる。結果、ラルフは泣く泣くマルガリータ処分を受け入れるしかできなかった。

「偉い」

「処分を受け入れたから、再就職を――」

「わかっている」
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