ロスト・クロニクル~後編~

 礼儀知らずのラルフの態度にフレイは顔を引き攣らせるも、流石というべきか普段の冷静な一面を保ち続けるが、フレイはラルフをいつまでもこの邸宅で世話をする予定はないという。

 ラルフには彼専用の一軒家を仕事場近くに用意するので、その一軒家で生活を送り懸命に借金返済に励んで欲しいというのがフレイの考え。勿論、定期的に借金が返済されているかチェックを入れ。

「一軒家まで……」

「仕事斡旋とそれだけだ」

「十分過ぎます」

「雨露を凌げる場所があった方がいい。特にクローディアの冬は厳しい、南の国の出身者にとって」

「ラルフは、冬を苦手としていました。メルダースに在学していた時も、寒がっていました」

「なら、尚更だ」

 本当に人間の人生というものは、どのような形で転換するかわからない。メルダース在学時、ラルフは「クローディアに行き、エイルの両親に会ってみたい」と煩いほど騒いでいたが、まさかこのような形でラルフがクローディアを訪れるとは、予想もしていなかった。

 こうなると悪友関係ではなくて「腐れ縁」と表現した方がいい。それにラルフが背負っている借金の総額を考えると、一生付き纏われる可能性を考えた方がいい。腐れ縁という言葉は伊達ではなく、どのように足掻いたところでラルフとの縁は切れることはないだろう。

 だが、仕事場が一緒ではいというのが幸いなことか。ラルフと性格面が似たアルフレッドがいるが、あちらは空気が読む能力に長けているので、暑苦しい一面を持つが付き合い易い。

 といって、両者とも存在感が大きい。何故、このような人物が自分の周囲に集まってくるのか――側に父親がいなければ、エイルは頭を抱え自分が置かれている状況を嘆き絶叫していた。

 その後、今後の状況を念頭に置きつつエイルは父親と細かい面での話を進めていく。今回の会話で決まったことは、ラルフの就職先の斡旋と住居の用意。

 また、きちんと借金の返済が行なわれているか定期的に連絡を入れて貰う。勿論、連絡を入れて貰うのはラルフ本人ではなく仕事先の人間の方がいい。

 あのように見えて、悪いことに関しての知恵が働くので給料の大半を懐に入れるに違いない。これにより、ラルフの借金返済の方法が決定する。相手が今回の計画を受け入れなくても、これは強制的なことなのでラルフに全ての借金を綺麗に返済して貰わないといけない。
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