ギャルとメガブス
私は誰もいない音楽室で、一人、夢の演奏会を開いていた。


それは幾度となく繰り返され、時折、見回りの先生に帰りなさいと注意されることはあったものの、その他は誰にも邪魔されることなくピアノを弾くことができた。


音楽室が、特別教室ばかりが並ぶ校舎の三階の、一番奥にあったことが幸いした。



そこは、私の唯一のサンクチュアリであった。


そこでならば私は現実世界の「メガブス」ではなく、才能溢れる美しい少女でいられたのだ。



その日も私は、音楽室でひっそりと演奏会を開いていた。

観衆は、もちろん私の妄想の中にしかいないはずだった。



私は自分のピアノに酔い痴れていた。


心地良く、曲の山場を迎えたところで、私は驚いて飛び上がった。

椅子が膝の裏に当たり、ガタンと激しく音を立てて倒れた。


私が驚いた原因は、閉めたはずの音楽室のドアが開いていて、薄暗い夕闇の廊下に、誰かが立ってこちらを見ていたからだ。
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