愛させろよ。
歩きながら、俺はたずねた。

「なんで楽器を持ち歩いてるんですか? 重いのに」

「さあ……精神安定剤みたいなものかしら」

「精神安定剤、ですか」

「クラリネットが無ければ、私は生きていけない」

その言葉にひどく危うげなものを感じて、俺はひやっとした。

「クラリネットは私の唯一の親だし、友達なの」

「親……唯一の? 蘭さんは?」

「桐谷蘭は親なんかじゃないわ。ただ子宮を貸してくれただけ」

「はあ……」

よくわからない。

ここまで言うなんて、何があったんだ?
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