ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
路駐してあった那智の愛車に、二人ほぼ同時に乗り込む。
「ほとんどが大嘘」
運転席で座り心地を直しながら、那智が溜息まじりにこぼした。そうしてハンドルに半身を預け、フロントガラス越しに覗き込んで、初音のマンションを見上げた。
「けど真実もある。全部が作り話だとは到底思えない」
頭の中で、初音と交わした遣り取りを思い返す。
「どれが真実でどれが嘘か……」
那智は身を起こして背中をシートに沈め、ふうと息を吐いた。
「なんで急に話す気になったんだ?」
誰にあてたものでもない問いを口にする。
「さあ……」
苦笑して返した那智だったが、その顔からすぐ笑みは消え失せ、深刻な面持ちになった。
「お前なら……彼女の気持ちがわかるんじゃねーの?」
那智は唯一の肉親だった姉を殺された。それからは正に、天涯孤独の身だ。窪田が息子のように可愛がってると聞いたような気もするけど、所詮は赤の他人。
「俺は彼女じゃない」
含みのある物言いで答えてから俺に視線を寄越すと、那智はニッと両口角を上げて見せた。