鬼部長の優しい手




「ねぇ、黛実ちゃん。

この後暇?」



黛実ちゃんの鈍感さにイライラした
俺は気がつけば、そんなことを口走っていた。



「あんたの奢りなら、
喜んで行くわよ?」



俺の誘いに少し驚いた素振りを見せながらも、黛実ちゃんはそう言って微笑んだ。



あ、今の笑顔すごい可愛かった。



って、そうじゃなくて、
まだ黛実ちゃんは余裕ってわけ?

俺ばっか一人で焦って
バカみたいじゃん。


悔しいからもう少し焦ってもらうよ?







「俺の奢りなら、
どこへでもついてくる?」


「え?

…まぁ、行くけど?」





きたきた。


主導権握ってられるのは
そこまでだよ?黛実ちゃん。






「そ、なら俺ん家ね。」



俺は、さっきの黛実ちゃんのように
微笑んだ。






「は?いや、ちょ、え!?」


「何?俺の奢りなら、どこへでもついてくるんでしょ?

やっぱり無理とか、無しね。


じゃあ出発!」




真っ赤な顔で驚く黛実ちゃんをよそに、
俺はそしらぬ顔で元気よく出発の
合図を出した。






…驚いてる驚いてる。

ちょっとは俺の気も知った?





まぁ、黛実ちゃんにとっては、
好きでもないただの同期の家に行くだけだから、そんなドキドキもしないだろうけどさ。





…なんか、自分で言ってて泣きそうになってきた。



< 134 / 188 >

この作品をシェア

pagetop