鬼部長の優しい手



「…なんで、そんな余裕な顔して
笑えるのよ」

「…え?」



「私のことからかって、
そんなに楽しい?

いい趣味してるわね。」



黛実ちゃんは涙を拭い、
震えた声でそう言った。



え?待って、
なに言ってるか全然わかんない


余裕な顔してるって?
からかってるって?



こんな情けない姿晒して、
必死で黛実ちゃんの気を惹こうと、
バカみたいに口説きまくって、



「…俺が余裕な顔して笑ってるって?

黛実ちゃん、それ本気で言ってんの?」


「…っ」





黛実ちゃんの予想外の言葉に、
俺のなかでストッパーが、外れた。



「黛実ちゃんの一言に一喜一憂したり、
黛実ちゃんの笑顔見ただけで、なんか
もう全部どうでもよくなったり、

夜中に急に声が聞きたくなって、
何度発信ボタン押そうとしたか、


黛実ちゃん知らないでしょ?」




「…じゃあ何?
私のこと、ずっと
好きだったとか言うの?」




…わけわかんない。
なんでそんな泣いてるわけ?

なんで、そんな怒ってんの?



…けっこう、わかりやすく口説いてたつもりなんだけど?




今更、好きだったって言うの?とか、






「好きに決まってんだろ!

それ以外になにがあるんだよ!」




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