鬼部長の優しい手


タクシーに乗り込み、
ふらふらになった部長を強引に
車内に入れる


本当に、参ったな…

まさか、あの“鬼の塚本”に
こんな一面があったなんて。






そんなことを考えているうちに
タクシーの車窓から
まだ、新しそうなマンションが見えた。




あ、ここかな。



「すみません、ここで下ろしてください。」




運転手にそう、断りを入れ
タクシーからおりる。



部長を強引に引っ張り出し、
無理やりおろした。


まったく、これじゃあどっちが
歳上かわからないじゃないですか。
あとでタクシー代の1260円、
部長の財布からこっそり抜き取ってやるんだから!


そう意気込みながら
マンションの前まで歩く。


タクシーの中からは、よくわからなかったけど…





「…でかすぎる…」




なにここ、城じゃない。



黒を基調とした外観、
めいいっぱい見上げて、やっと見える
最上階


なんというか、
すごく部長っぽい…っ!



私は立つのもままならない部長を
支えながらマンションの前に立った。





「部長!しっかりたってください!」


「おー…」



「私、もう帰りますからね!」




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