鬼部長の優しい手


「…サムシングフォー?」

「あんたも一応ウェディングプランナー
でしょ?
だったら、ねぇ?知ってるわよね?」


黛実さん、一応ってひどくないですか
一応って!いつも一緒に
仕事してるのに!

私はそんな怒りをぶつけるように
黛実を睨む。

私の視線にかまうことなく、
黛実はにやにやと笑みを浮かべている。


むかつく!

…なんだったけ。
ああ、サムシングフォーだ。
サムシングフォーって、たしか…

「結婚式の日、花嫁が身に付けると
幸せになれるっていう、
ヨーロッパの言い伝えだったよね?
たしか。」

「そうそう。えらい!ちゃんと知ってるのね!」

そう言って黛実はパチパチと拍手をして、綺麗にセットされた私の頭をくしゃくしゃと撫でる。

…本当に黛実は私をなんだと思ってるの。
と言うか髪ぼさぼさになっちゃう!

またふつふつとわいた怒りをぶつけるように黛実を睨んだ。

「サムシングフォーっていうのはね、

サムシングニュー、なにか新しいもの。
サムシングオールド、なにか古いもの。
サムシングブロー、なにか借りたもの。
そして最後にサムシングブルーなにか
青いもの。

この4つのものを身に付けると幸せになれるっていう、結婚式の言い伝え!」


黛実は指をおってひとつひとつ説明
し、最後にびしっと人差し指を立てた。

サムシングフォーはわかったけど、
それと黛実が持ってるこのピンクのグロスとどんな関係が?


不思議そうな顔をする私に気づいた黛実は微笑み、グロスのキャップをあけた。

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