鬼部長の優しい手




夕方からはじまった打ち合わせを
終えて帰路につく頃には
辺りはもう街灯の光だけを頼りにしないと周りがわからないくらい真っ暗になっていた。




…やっぱり、一人で全部ってなると
結構しんどいな…


あまりの疲労感に、ふーっと
大きな、ため息を漏らす。




打ち合わせが、あと二回にわたって
あって…

その後は式場の予約に、
参列者に出す予定の料理の手配、
ブーケの発注もして…

やっぱり、大変だなぁ…
プランナーって。



そんなことを考えながら薄暗い
夜道を歩いていると、
背後に気配を感じる。




な、なに…
なんか足音がする…


て、て言うか、
近づいてきてる?




少し遠めに聞こえていた足音が
少しずつ近づいてきてるのが、わかる。





その足音から逃げるように歩くスピードを速めると、
その足音も徐々にスピードをあげていく。









どれだけ早く歩いてもついてくる…


な、なんなの。ストーカー…とか
じゃないよね?







私が恐怖で足が震えたとき、
背後から、聞き覚えのある声がした。








「…せ、七瀬!」



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