鬼部長の優しい手



この声…


「部長…?」


後ろから聞こえた声に驚き、
慌てて振り替える。


そこには、少し汗をながし、
息を切らして、こっちに走ってくる
部長の姿が。



じ、じゃあさっきの足音は、
部長だったの?





「部長…?どうしてここに…」


「ちょうど仕事が終わって…

今日、七瀬打ち合わせだって笠野に
聞いてそろそろ終わる頃かなって、

まぁ簡単に言うと女一人の夜道は危ないから、七瀬を送ろうと思って。」


部長は、なんとか私に追い付いて、
息を切らしながらそう言った。






それで、わざわざ走ってきてくれたの?
あの部長が?



部長は汗ではりついた髪をかきあげながら、ふっと微笑みこう言った




「最近お前、頑張ってるから
特別だ」




そう言って部長は、ぽんっと私の
頭にごつごつした手をおく。






「すみません…わざわざ…」



なんだか、気恥ずかしくて
まともに部長の顔が見れない…


私は自分の足下に目線を向ける







「…前にも言ったが、七瀬は少し
謝りすぎだ。だいたい俺が勝手に七瀬を
送りたくて来たんだから、七瀬が
謝る必要なんかない。」





部長はそう言って、尚も私の頭を
優しく撫でる。







…あったかいなぁ…
なんか、眠くなってきた…



仕事を終えた疲労感と安心感、
それと部長の優しい手に、
強烈な眠気が襲ってきた。








「七瀬は少し謙遜しすぎだ。






よし、今日は“すみません”禁止。
部長命令だ、今決めた」




私が眠気に負けそうになったとき、
部長は呆れたように微笑んで、
そう言った。


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