鬼部長の優しい手
「問答無用です!
さぁ、帰りますよ!」
私は未だにぶつぶつとなにかを
言っている部長の腕を掴んで
引きずって歩く。
冷静になって考えてみれば、
上司にそんなことするなんて、
すごく失礼なことだった
だけど、そのときの私は
そんなことすら考えられないくらいに
気が動転していた。
「部長、歩けますか?」
「あ、ああ。
歩ける、歩けるが…
お前、まだ仕事が残ってたんじゃないのか?」
部長のその言葉に私は机の上に山積みになっていた書類を思い出す
でも、今は部長が心配だし
きっと今仕事に戻ったところで、
なにも手につかない
…部長のことで頭がいっぱいになって。