髪から始まる恋模様【SS集】

覚えていてくれたんだ…。

私だって覚えてる。

今ここにいるタイチ君が

本当にスタイリストになったのは

ちゃんとわかってた。

副店長の肩書きと名刺と

今私の髪をカットしている事で

きちんと証明されている。

デビューの夢を叶えて

実力つけて昇りつめたんだね。


…でも、どうして。

『会いたかった。』なんて

『何で来てくれないの?』なんて

そんな事を言うの?

何だかまるで

私を待っていてくれてたみたいな…。

恋人や好きな人に言うような

セリフみたいで

何だかドキドキしちゃうじゃない。

今ですら

私の髪に触れる

タイチ君の細長い指先に

ハサミの音に

話しながらも、鏡を見ながら

真剣な眼差しでカットしている姿に

あの時よりさらに背が伸びている事に

ハニーブラウンも今は

落ちついたナチュラルブラウンに

なっている事に

可愛かった雰囲気も

今は大人びている事に

男の色気がだだ漏れしているようで

見惚れてしまいそうになる。





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