髪から始まる恋模様【SS集】
「…長さはあまり変えてないけど
後ろ髪の毛先で重くて
若干傷んでた所は少しハサミを入れて
梳かせて貰った。
横髪はシャギーとレイヤーを入れた。
前髪は毛先揃えて梳かせて貰った。
次回の時は
カラーも一緒に予約するといいよ。
カリンさんならミルクティブラウンか
クリーミィベージュのどちらでも
似合うと思うよ。」
そう言ってタイチ君は
説明しながら鏡を仕舞い
首のケープとタオルを外して
椅子を左側に動かすと
「…カリンさんお疲れ様。
ありがとうございました。」
と、私の前に手を差し出した。
「…あっ。」
キミコ店長はそんな事をしないから
その手にドキドキするけど
きっと私が床に落ちた髪の毛を踏んで
滑らないようにと
手を差し出てくれてるんだね。
そう思いながら私は
その手にそっと自分の手を重ねた。
しかし、その瞬間
「……キャッ!!」
彼にグイッと引っ張られて
立ち上がらされた私は
ギュッと抱き締められて
タイチ君の腕の中にいた。