年下オトコたちの誘惑【完】
「俺のこと、どう思ってんの」
「え…」
「過去とか、そういうの全部関係なく。お前は、俺のこと。どう思ってんの」

そんなこと…。どう思ってるって…。好き、だけど…。どうしても口には出せなくて…。

わたしが黙ってると、グルンと碧都のほうに向けさせられた。

「俺の気持ちは伝えたよな?好きだ、って」
「……うん」
「杏はどうなんだ、って聞いてんの」
「そんなこと、」
「あー、めんどくせぇから。好きか好きじゃねぇかで言えよ」

そ、そんな…。もう言うしかないの?素直に『好き』って言っちゃう…?

でもやっぱり、怖いよ…。もしあの人が碧都のこと、好きになったら…?

碧都だって、いつ好きになるかわかんない。

そうなったら傷付くのは、わたし。だったら、もう恋愛なんかしたくない。

今ならまだ引き返せる。気持ち押し込めて、ギュッて小さく丸めれば、いけんじゃないかな。

『好きじゃない』心の中で、何度も繰り返す。

そう。そう言えばいいだけ。あとは、押し込めるだけ。

口で、ゆっくりと深呼吸をした。そして、碧都と目を合わせる。

「碧都。…わたし、碧都のこと」
「ウソはつくなよ?」
「えっ」
「だから、ウソはつくなつったんだよ。俺言ったよな?過去とか、そういうの関係なくって」

碧都には、わかったのかな。わたしが、これからウソをつくことを。
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