年下オトコたちの誘惑【完】
キス…された。

あの、ケダモノに…。

ライオンに…。

碧都に…。

出会ったばかりのヤツなのに。どうしてわたしは、許してしまったんだろう。

わたしなら、突き飛ばせたじゃない‼︎

なのに…。突き飛ばすどころか、声すら出なかった。

だって、アイツ…。

すごく悲しそうな顔してた…。

キスの後は、目を細めて笑ってた…。

「あんな顔されたら、何も言えないじゃないっ…」

もう、いいや。早いとこ着替えよ。『なにチンタラしてんだよ‼︎』って、アイツなら言ってくるに決まってる。

アイツに手渡された、水着を再度広げ一つ思った。

あ…。

そうだ、そういえばアイツ。今日から来るはずだったオンナノコに、手出したんだったっけ。

あはっ、なーんだ。あんな顔するから、騙されちゃうとこだったじゃない。

別に意味なんてないんだよ。ただ、アイツがしたかったから、しただけ。

ただ、それだけ。

別にいいじゃない。

キス、くらい。

相手は年下。しかも向こうは、わたしのことを“ばばぁ”ときたもんだ。

やっだぁ、もう‼︎わたしったら。なにを、意識してんのよ‼︎あー、笑っちゃう。

「働くからには、とことんやってやろうじゃないの‼︎」

わたしは決心すると、素早く渡された水着に着替えた。

髪はオレンジ色のシュシュで、年甲斐もなくポニーテールにした。

化粧ポーチに入れてある手鏡を出して、チェックしてみる。

「…若作り、しすぎたかな」

自分を見ながら苦笑してみる。そして再び気合いを入れ直すと、着替えはカバンの中にしまって、みんながいる場所へ戻るために、ドアを開けた。

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