あの日あの時...あの場所で
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瑠樹に言ってない事がある。
いや、言える訳なんてないんだ。
千景と俺だけが知ってる事を...絶対に知られちゃいけない。
瑠樹があいつの事を聞かなくなったのは何時からだ?
俺があいつの事を言わなくなったのは何時からだ?
もう遠い昔だと思いたくて、俺も忘れた振りをしてたけど。
嫌でも耳に入ってきた。
ヤンチャな事をやってたら、耳に飛び込んで来た噂。
馬鹿げてると最初は信じなかったけど...。
会いに行って真実だと知った。
瑠樹には言えない。
瑠樹は知っちゃダメだ。
傷つけたくないんだよ、可愛い妹を。
自由奔放に育ったように見える瑠樹は、実は苦労も悲しい思いも沢山してきた。
俺や親父や、死んじまった婆さんを困らせないようにと明るくしてたけど。
瑠樹はあの小さな体に沢山の悲しみを抱えてる。
だからもう...傷つけたくない。
だから、豪に瑠樹を任せた。
そうすれば、瑠樹を大切に囲ってくれると分かっていたから。
隠されて守られて、そして幸せになれば良い。
もう、あいつと再会なんてしなくていいんだ。
「咲留、俺達、心配しすぎたか?」
隣のブランコに座る千景が眉を下げた。
「ちょっと変に思ったかもな?」
ふう...と息を吐き出した。
夕飯が終わった後、帰る源次達と一緒にマンションを出て、千景と近くの公園にやって来た。
源次と健はもう一軒飲みに行くとか肩を組んで町へと消えてった。
暗闇に包まれた公園、俺達の乗るブランコだけがキーコキーコと金属音を響かせる。
「俺は間違ってるのかな?」
言わないこと。
真実を伝えないこと。
「いや、間違ってねぇだろ?あいつは瑠樹を捨てて、くだらねぇ男になったんだ。それを瑠樹は知る必要ないさ」
千景がいつになく強い口調だった。
「だよな。瑠樹はあいつを忘れて幸せになるべきだ」
「ああ。その為に豪を瑠樹につけたんだろ?豪なら、瑠樹を守ってくれる。何からも」
「だな、豪は良い男だからな」
「ああ。俺の弟は瑠樹を泣かせねぇよ」
千景と俺は顔を見合わせる。
「明日...会ったりしねぇよな?」
不安で仕方ねぇ。
「豪達が瑠樹に近付けさせたりしねぇよ。あいつらにとってあの男は敵だからな」
千景はポケットから取り出し煙草に火を着ける。