あの日あの時...あの場所で
「俺にも一本くれ」
と言えば、
「ほらよ」
と箱を差し出してくれる。
千景の着けてくれた100円ライターの火を分けてもらった。
吸い込んで吐き出せば、白い紫煙が闇に吸い込まれるかのように立ち上る。
それを追うように視線を上げれば、そこには鈍い色の月に覆い被さろうとする薄汚れた雲。
.....凄く嫌な予感がした。
大丈夫だと思えば思うほど、頭の奥に警鐘が響くんだ。
「帰ったら、豪にも念を押しとくわ」
そう言って立ち上がると、千景は煙草を地面に落として踏み消した。
「ああ。何があっても西とは関わるなと言っといてくれ」
「了解、じゃあな?」
ひらりと手を振って背を向けた千景。
ザクザクと砂利の上を歩く音が静かな公園に響く。
「さて、俺も帰るか。お姫様が待ってるからな」
クイッと口角を上げて、俺は最後の一口を吸い込んだ。
そして、それを携帯灰皿に揉み消した。
もちろん、千景の吸い殻も拾っておく。
俺は地球に優しいからね?
携帯灰皿をポケットに放り込んで歩き出す。
もう一度だけ夜空を見上げた。
すっかりと雲に隠された月。
胸の奥になんとも言えない感情が渦巻いた。
この時の俺の悪い予感は当たることになる。
咲留side.end
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