あの日あの時...あの場所で










エレベーターを降りて自動ドアを抜ければ、エントランスの窓際に一際目立つ豪の姿を発見した。

あ、豪の私服って初めてかも。


白いTシャツに七分袖の灰色のパーカー、深緑のカーゴパンツ、シンプルだけど豪らしい感じがした。


豪は背が高いから、なんでもそつなく着こなしちゃうんだろうな?


ちびっこの私とは大違いだ。




「豪」

声をかければゆっくりとこちらへ視線を向けた。

そして...なぜか固まった。


ん?どうした、豪。



「...豪?どうしたの?」

駆け寄って下から顔を覗き込んだ。


「あ、お、おお。普段着は見慣れねぇから」

戸惑った様に言われた。


「あ...変..かな?」

咲留にしたように、その場でクルッと回って見せた。


「いや、似合ってる」

ぶっきらぼうだけど、そう誉めてくれる。


「良かった」

うん、嬉しい。


「ってか、今日はあんまりチョロチョロするなよ?」

「ん、もう!豪もなの?」

はぁ...と肩で息をつく。


「咲留さんと兄貴に言われたのか?」

おっ、察しが良いね。


「そうよ。口を開けば気を付けろって言われる」

「ククク...仕方ねぇよ。皆、瑠樹が可愛いんだ」

ポンポンと頭を叩かれた。



「でもさ、もうすぐ18になるのに迷子とかないよ。さすがにさ」


「分かってるけど。こんなに可愛かったら拐われんじゃねぇかと心配なんだよ。な?」

豪はぶっきらぼうだけど、時々ストレートな言葉をくれる。


そんな風に言われたら反論できないし。


しかもその笑顔はダメだよ。


「...豪は狡いな。」

ポツリと吐き出した声は、

「なにがだよ?」

と豪に届く。


豪の側はとても心地が良いんだ。


「...なんでもないし」

フフフと笑った。


「ほら、行くぞ」

私の手を掴んで歩き出す。


「うん、今日は楽しもうね?」

豪の手をしっかりと握り返した。


「ああ、そうだな」

隣から見上げた豪の口角は上がってた。











 
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