ヒミツの王子さま!
だから、最後にもうひとつだけ。
「……なあ、日向」
「なに?」
立ち止まって、ゆっくり振りかえる。
繋いでいた手をグッと引き寄せて、耳元に顔を寄せた。
――……今度は聞き逃すなよ?
「やっぱりさ、今すぐ俺のモンになる?」
「……っ!?」
固まった日向から距離をとる。
そうそう、その顔が見たかったんだ。
「……ぶは! 日向、顔真っ赤」
それがおかしくて思わず吹き出す。
真っ赤な顔が、今度はどんどん青ざめていく。
「な……なな……か、からかわないでよぉ」
ワナワナと体を震わせると、笑い転げる俺からツーンと背を向けて歩きだした。
「あれ? どこ行くんだよ」
「もう知らないッ!」
大げさに歩く日向の後姿から、ふと窓の外に視線を落とす。
2階の窓から見える景色は、まだ葉のつかない桜の木。
その枝の先に、小さな蕾を見つけた。
ちょっと前までは、なにもなかったのに、まだ寒い2月に小さな小さな蕾をつけている。
それだけのことがなんだか無性にうれしくて。
降り注ぐ太陽に日差しの中に、春の気配を感じてしまった。
そして思い出すんだ。
『あの日を』
俺が「男」になったあの特別な日。