社宅アフェクション
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学校祭2日目。朝の7:37。私は1人、練習していた。
そう、今日のステージ発表。インハイ前の初公開演技が、午前中に予定されている。


音楽を鳴らさないことを条件に、先生に無理言って開けてもらった練習部屋。
鏡の前で最終調整をする。


「タンタンタ~タラタンタンタン……ふぅ~…よし!!上手くいったかも!!」
「こら!!こんな朝っぱらから何してるんだ!!」
「ご、ごめんなさいっ!!」


ミスなく一通り演技を終えた喜びを感じたのもつかの間、怒声が飛んできた。先生だっ!!!!
相手を確認する前に、すぐに声のした方向に頭を下げた。


「ぷっ……はっはっはっは!!ごめん、ハニー!大丈夫だよ、頭上げて」
「えっ?」


顔を上げると、笑っている直人が目に飛びこんできた。顔の前で両手を合わせている。


「も~脅かさないでよぉ!!」
「はははっ!ハニー、先生に怒られること多いから、すぐに謝るクセついてるね」
「からかわないでっ!!」
「ごめんごめんw」


直人が本気で謝ってないのはすぐ分かる。まぁ私が本気で怒ってないのが分かるからだろう。


直人と向き合っていたら、私はあることを思い出した。そして、急に恥ずかしくなった。


「今日のステージ練習?」
「まぁね」
「朝早くから熱心じゃん」
「私、副部長だから?自覚と責任ってのがあるわけよ」
「ふ~ん。ハニーらしいね」
「そう?」


私は後片付けをしながらたんたんと言葉を返した。どうしよう。直人を見て話ができない。


「直人はどうして朝早くからこんなとこに来たの?ステージ発表の練習とか?」


新体操部でもない直人がここにくる理由なんて私に用があるに決まってる。
告白の返事を聞きにきたんだ……


「ん?別に?ただ学校に早く着いちゃったからヒマで来てみただけー」
「……え?」


予想外の言葉に、私は振り向いた。いつの間にか直人はすぐ後ろにいて、私の顔をブニッと両手ではさんだ。


「ほんっと真綾って分かりやすいよね。どう?これで俺から顔、そらせないでしょ?流行りの壁ドンより効果あると思わない?これ」
「にゃ…おとぉ……」


やられた……
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