臆病者の散歩道


「あ…。」

星を見上げてしばらくすると星が流れた。
それに気付き、柚が声を上げる。

「大翔、今の見た?」

「もち。」

夜空に大きく、まるで飛行機雲みたいに線を描いた。
白くハッキリとした流れ星。

「すごかったね。」

「そうだな。」

「もう一回流れないかな?」

「見てれば流れるかもな。」

「そだね。」

会話はそれだけ。
二人でまた星空を見上げた。

            *

何時間経ったんだろう?
星の位置が変わって、白鳥座が完全に沈んだ頃、俺は柚を見た。

「あのさ。」

「?」

きっと俺の真面目な顔に珍しいとか思ってるんだろうな。
柚はきょとんとした顔を見せた。

「お前……」

「???」

なかなかハッキリ話せない。
カンタンに言えるくらいなら、もうとっくに言ってる。
俺はやっぱり臆病者だ…。

「やっぱりいい。」

俺は、結局言えずにまた星空を見上げた。

(情けない…。)


< 10 / 26 >

この作品をシェア

pagetop