極上な恋のその先を。


そして。
センパイの不審な行動の理由がわかったのは、それから一週間ほどたった、爽やかな日曜日の事だった。


その日は、久しぶりに百合と一緒にランチをしていた。



「もぉ、ほんと。魔の二歳児ってよく言ったもんよ。お店に買い物行けば走り回って言う事聞かないし。あの子はほんとに女の子なのかなって、たまに思う」


クルクルとフォークにパスタを絡めながら、百合は大きな口でそれを頬張った。


「ん!美味し」


途端にその表情に、パッと花が咲く。


「あ、顔はパパにそっくりだよね」

「ええ? わたしでしょ?」


ジト目であたしを見た百合。
あたしはうーーんと思い返すと、コクンと頷いた。



「うんん、やっぱりあの仔犬みたいな目は、真山くんだよ」

「目だけね。目だけ」

「ふふ」


まんざら嫌そうじゃない所をみると、やっぱりパパに似てると思ってるんだ。


「でも、まさか百合が真山くんと結婚するなんて……。あの時の衝撃は、あたしたぶん一生忘れない」


焼きたてのパンを小さくちぎってパクッと口に放り込む。
フワリと、クルミの優しい風味が口の中に広がった。


「わたしがいちばん驚いてる」


すまし顔の百合が可笑しくて、あたしはすかさず言葉を重ねた。



「でも、幸せでしょ?」

「……結婚して家族が増えて、正直ほんとにムカつく事だっていっぱいあるけど。まあ……それでも幸せ、かな」


今度は、頬がバラ色に染まった。


「そっか」

「……。なに笑ってるのよ」

「別に?」


照れくさそうにする百合を見るのは、珍しい。
あたしはそれが嬉しくて、もう一口、パンを頬張った。




……結婚か。



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