極上な恋のその先を。

2年前のあの日の事は、今でも鮮明に思い出せる。


――――――……
―――……



あれは、残暑が厳しい夏の日の午後。
たまたまロビーに降りていたあたしは、目の前を走り去る百合を見かけたんだ。

具合でも悪いのかと思って、その後を追うと……。


トイレの個室から青白い顔の百合が出てきて。
涙目であたしに抱きついてきたんだっけ……。



『病院付き合って!』

『え、病院? いいけど……どうしたの?どこが痛いの?』


華奢な肩を抱え込み、そっと顔を覗き込むと。
百合は俯いたまま言った。



『産婦人科』

『え』



産婦人科?
って、まさか……。


『妊娠……してるの?』

『……と、思う』

『なにそれ、検査したの?』

『してない。……けど、生理が3ヶ月来てない』

『……』


相手は、誰?

それを言おうとして、口をつぐんだ。
とにかく今は、病院だ。

その日、仕事終わりに駅近くの産婦人科を訪れた。


院内はとても明るくて、たくさんの女性で溢れかえっていて。
その中には夫婦で訪れている人、あたし達のように会社帰りの人の姿もあった。

受付け横のテレビ画面では、病院の案内ビデオが流れている。
あたしは雑誌から顔を上げて、ぼんやりとそれを眺めていた。


と、その時だった。


バタバタと慌ただしい靴音が聞こえたと思ったら、聞き覚えのある声が飛び込んできたんだ。



『す、すみませんッ! あの、百合さん……白鳥百合さんって来てますか?』



受付けに飛びつくようにして身を乗り出していたのは、真山くんだった。
その剣幕に、受付にいた事務の人も目を丸くした。

もちろん、ロビーにいた人みんなが注目していて。


でも、頬を真っ赤に染めて汗を流している真山くんは、そんな事まったく気づいていない様子。


あたしは、そそくさと立ち上がり真山くんの腕を引いた。





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