極上な恋のその先を。

ハッとして顔をあげると、お父さんが心配そうにあたしを覗き込んでいた。


「顔色悪いけど……大丈夫?」

「あ、はい!大丈夫です、ごめんなさい」


お父さんがいるのに、あたしってばなにボーっとしてるの。
ニコリと笑って見せて、テーブルの上ですでに冷めてしまった紅茶を手に取った。



そこで気付く。

指先が……震えている事に。


あたしはサッと手をしまうと膝の上でギュッと握りしめた。




「渚さん」

「……はい」


声だけは、震えないように。
あたしはキュッと唇を引き締めた。


お父さんは、穏やかにあたしを見つめていて。
センパイに似たその瞳を下げて、そしてふわりと微笑んだ。




「……和泉は甘える事を知らない。もっと甘えていいんだって、君が教えてやってくれないかな」



……え?



「不器用だし、口は悪いけど……それでも、私の自慢の息子だよ」

「…………」



そう言ったお父さんの顔が、凄く優しくて。
その瞳に深い愛情を感じて。


思わず、涙が零れてしまった。








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