極上な恋のその先を。


日曜日の繁華街は、たくさんの人で溢れていた。

楽しそうな若者。
外食帰りの家族連れ。
寄り添うように歩く恋人たち。

センパイのお父さんを駅に送った後。
あたしは、ただぼんやりと駅前のロータリーのベンチで、行き交う人々を眺めていた。




「……」




いつまでもこの街は賑やかで、眠る事を知らない。
見慣れた、いつもの日曜日。


ここが、あたしの住む街だ。








そして、センパイはパリへ行ってしまう。
行ってしまえば、きっと、もう帰ってこない。




ねえ、センパイ。

本当は、それを言うために帰って来たんでしょ?
あたしに、”別れ”を告げるために……。


そんな事知らないあたしはひとり舞い上がって、浮かれて。
だから言えなかったんでしょ?

カワイソウってそう思ったんでしょ?


お見合いの話だって、どうでもよくって。



センパイ……。
あたしは……センパイがわかりません。


どうして何も言ってくれないの?

あたしは、それだけの存在だったの?



……。



喉の奥が焼けるように痛い。一気に視界が歪む。
頬に伝わる涙が、手の甲に落ちて。

それはハラハラと散って行く。


まるで……
この恋の終わりを、予感させているようで。

どうしよもなく、苦しかった。


< 59 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop