極上な恋のその先を。
カタカタカタ、タン!
カタカタカタ、タン!
ものすごい勢いでタイピングを繰り返す。
無心にパソコンの画面と資料を睨んでいると、すぐ横であたしを呼ぶ声がした。
「佐伯」
「……は、はい」
顔を上げると、さっき出来上がったばかりの資料に視線を落としたままのセンパイが、椅子ごとこちらに向き直ったところで。
「これ」
「え?」
思わず資料を覗き込むと、ギロリと視線を上げたセンパイと目があった。
びくっ!
相変わらずの、真っ直ぐで自信に満ち溢れた眼差しに息を呑む。
すると、一瞬小さく息を吸い込んだセンパイの表情が一気に曇った。
「お前、なにやってんだ!」
「えっ」
「え、じゃねーよ!よく見ろ!
ここ間違ってんぞ!あと、ここ!ここもだっ!ボサッとしてんなよ、こんな凡ミス新人でもやんねーぞ!」
「はっ、はいぃ!」
指摘された箇所に目を通す。
確かに、数字の打ち間違いがあった。
ひーー!
顔面蒼白。
固まっていると、そんなあたしにお構いなしで、3年ぶりのお説教は続く。
懐かしい?
とんでもないっ!
周りにいた、真山くんも、柘植さんも。
なぜか楽しそうにあたし達を眺めている。
わ、笑われてる~!
「佐伯っ! 聞いてんのかっ」
「はいっ!」
うう。
センパイの鬼っ、悪魔っ!大魔王!
完璧に仕事モードのセンパイに背を向け、パソコンに噛り付く。
なによなによ!なんなのよ!
久しぶりに会ったって言うのに、いきなりそれはないでしょ?
もちろん、センパイに気を取られてミスをしたあたしもいけないけど!
―――……こうして。
あたしと久遠センパイは、ロマンチックなんてかけらもない、3年ぶりの再会を果たしたのだ。