Sweet Rain

ハンバーガーと涙

人気の少ない人家の立ちならぶ道を抜けると舗装された二車線の道路に突き当たった。

何台もの車が止めどなく走り続け、信号待ちになると一斉に車が止まった。

僕らの乗る車はわき道の入り口で立ち往生していた。

ようやく右折し、車の流れに乗るとあとは楽だった。

スイスイと流れる青信号はまるで生き物であるかのように故意にそうしているかのようだった。

「この道まっすぐ進んだら県外に出るけど」

その後はどうするんだ? 

と訊こうとする僕よりも先に弟が地図帳を開き進むべき道を指し示していた。

「そのまま今度は海沿いの道路に出てほしいんだ。そうしたらまた海沿いに走りすすめてほしい」

「どこまで行くんだ?」

「まだまだ先だよ」

「いつ頃までに着くんだ? その目的地には」

「今日中には着くよ」

フロントミラー越しの彼女は寝息を立てて、身体を横にしていた。

座ったまま意識を失い、倒れてそのまま寝ているといった感じだった。

大きな交差点に突き当たり、僕は表示板に従いハンドルを左にきった。

空だけ見るとさっきから昼なのか夕方なのかの判断がつかなかった。

スピードメーターの脇にあるデジタル時計で時刻を確認すると、まだ昼の1時を過ぎたあたりだった。

そこでハッとお腹が空いていることに気づかされた。

「なあ、どこかに寄ろう。腹が減ってたまらん」

「ダメだよ。時間がもったいないじゃないか」

「運転してる俺のことも考えてくれよ。これでも気を使って運転してるんだから」

しばらく弟は考え込んでいたが、やがて通り道にハンバーガーショップを見つけるとドライブスルーで買っていこうと提案した。
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