聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~
ゴーグが首をかしげている。

なぜアクスの攻撃を防げなかったのか、わかっていないのだ。

アクスは今が決着の時だと知った。ゴーグがこのからくりに気付いていない今を逃せば、勝機はない!

折れたあばらのことなど気にしている場合ではなかった。アクスは大きく斧を振りかぶると、跳躍した。

「うぉぉぉぉ―――――!!」

脳裏にファベルジェの姿が蘇る。

『脳天割り!? すっげぇ! 赤毛のおっさん、俺にもできるようになるかな』

それに重なってリュティアの姿が駆け巡る。

『岩が粉々…すごい技ですね! なんていう技ですか?』

二人の大切な人との約束が頭を占めていく。

『――約束だ』

『―約束ですからね』

約束を、果たすために。

すべての力を、この一撃にこめる―――!


ぐしゃりと肉がひしゃげる、重い手ごたえがあった。

紫の血しぶきの中、ゴーグがうつろな視線をアクスに向け――

そのままどう、と仰向けに倒れた。


アクスの斧はゴーグの脳天をまっぷたつに断ち割っていた。

ゴーグは死のその瞬間まで、なぜ土の防御壁が自分を守ってくれないのか不可解だったことだろう。彼はフューリィや村人たちを拘束するために土の力を使っている間、防御壁を張れなくなるという自分の弱点に、ついに気付くことはなかったのだ。

その時村の門がついにぶち破られたくさんの獣たちがなだれ込んできたが、主人であるゴーグの死に気付くと我先にと尻尾を巻いて逃げ去っていった。

―勝った…。

「勝った!」

「勝ったぞ!」

歓声が沸き起こりアクスとフューリィを包んだ。

皆飛び跳ね、はしゃぎ、二人を英雄と称える。アクスはあばらの痛みと病の症状で気が遠くなり、皆に助け起こされやっと立っていた。

フューリィは、人波にもみくちゃにされながら今は暗い空を見上げ呟く。

「約束、守れたよ…セラフィム様…」

村人たちがフューリィに笑みかけ、小突き、傷の手当をしてくれる。いつのまにか、フューリィの涙は止まっていた。
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